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中国ルールの勉強

目次

  1. 中国ルールとは
  2. 正式な条文
  3. なぜ日本ルールと同じような結果になるのか?
  4. 差は奇数
  5. 中国ルールと日本ルールで勝敗が入れ替わる?
  6. ダメも1目?(一手の価値)
  7. 自分の地に打つのは損しない?
  8. 手入れが損にならないのは中国ルールの欠陥?
  9. 「子」と「目」
  10. 整地
  11. 目算
  12. 生き死にの定義
  13. 隅の曲がり四目
  14. 超劫ルール
  15. 地の定義
  16. ダメ
  17. パス
  18. パスをめぐって1
  19. パスをめぐって2
  20. パスをめぐって3
  21. パスをめぐって4
  22. 置碁
  23. 気持ち悪い形
  24. あとがき

1. 中国ルールとは

日本ルールが (地-取られた石) を数えるのに対し、 (地+盤上の生きている石) を数えるルール。
言いかえると、日本ルールはいかに大きな地を囲うかを競うゲーム。中国ルールはいかに多く自分の石を置くかを競うゲーム。地は自分の石だけが置ける領域という意味になる。

2. 正式な条文

正式なルールの条文は例えばここで読める。中国囲碁競賽規則。 これは2002年版のルール。中国語繁体字で書かれているが、中国語がわからなくても結構わかる。exicteで翻訳もできる。
英訳はThe Chinese Rules of Goで読める。これは1988年版の翻訳。中身は大体同じようだ。

3. なぜ日本ルールと同じような結果になるのか?

日本ルールでは
結果(日)=(黒地-黒の死石)-(白地-白の死石).
中国ルールでは、
結果(中)=(黒地+黒の生き石)-(白地+白の生き石).
この差を取ると、
   結果(中)-結果(日)
 = (黒地+黒の生き石)-(白地+白の生き石) - { (黒地-黒の死石)-(白地-白の死石) }
 = (黒の生き石+黒の死石) - (白の生き石+白の死石)
生き石+死石というのはつまり打った石の数のことなので、
 = 黒の打った石数 - 白の打った石数
となる。
これは通常0又は1。黒から打ち始めて白で打ち終われば同数だから0。黒で打ち終われば黒が一手多く打っているので1。
以上から中国ルールの数え方と日本ルールの数え方では、通常高々1目の差しかないことがわかる。(「通常」でない場合は、途中パスがあったとき。これについては後述。)
ただし、上の計算で、中国ルールと日本ルールの「地」が同じ、という前提を勝手に使っている。通常はそれでいいのだが、成り立たない場合もある。それも後述

4. 差は奇数

セキのない場合、中国ルールでは5目とか7目とかの奇数目差の結果しかない。
ダメを全部詰めたあとは、盤面の全ての点はどちらかの地か石となる。盤面は全部で361の奇数なので、どう分けても奇数と偶数。従って差は奇数。
コミを5目半から大きくすることになったとき、韓国・日本は6目半にしたのに、中国は7目半にしたのはこのため。中国ルールでは盤面6目差になることは稀なので、6目半にしても効果がほとんどないから。
KGSでも中国ルールを選ぶと互先のコミは7目半。
ちなみに、日本ルールで「コミ6目半なら、半目勝負では最後のダメを詰めた方が負け」というのも似たような考察でわかる。 整地の時は取られた石も盤面に戻ってくるので、両者の地の和は361から両者が打った石の数を引いたものになる(セキがなければ)。黒が最後のダメを詰めると、黒の方が打った石がひとつ多いから、両者の打った石の合計は奇数。ということは白黒の地の和は偶数となり、その時は差も偶数となる。半目勝負なら盤面6目ということなので黒半目負け。

5. 中国ルールと日本ルールで勝敗が入れ替わる?

コミが5目半の時代は中国ルールと日本ルールでは少数の例外を除いて勝敗は一致していた。
前述したとおり、黒で打ち終わるときは、中国ルールは日本ルールより黒が1目多くなる。この1目差で勝敗が入れ替わるのは中国式で盤面黒6目勝ちのときだが、中国ルールでは普通奇数差しかないので、そういうケースは稀。
現在はコミが6目半と7目半と異なるので、勝敗が入れ替わることはもちろんある。
中国ルールのコミを6目半にしたとしても、黒で打ち終えて中国式で盤面7目でケースは、やはり勝敗が入れ替わる。

6. ダメも1目?(一手の価値)

中国ルールでは盤上の生き石を数えるので、ダメも1目の価値がある。しかし、当然だが、それはいわゆる後手1目の手と同じということではない。もちろんダメは後手1目より小さい
├●○┼
├●○┼
●●○┼
└○○┴
この図で、1の1のダメの地点を考える。現在はどちらの領域でもないが、黒が打てば黒1目増、白が打てば白1目増だから、見合い計算なら1目の手。出入り計算なら後手2目。
├●○┼  ├●○┼  ├●○┼
├●○┼  ├●○┼  ├●○┼
●●○┼  ●●○┼  ●●○┼
└┴○┴  └★○┴  └☆○┴
この図の1の2の地点。日本式の計算だともちろん見合い半目、出入り1目のヨセ。上のように中国式で考えると、黒が打てば黒2目増、白が打てば白1目増だから、出入り3目、見合い1目半のヨセになる。
一般に、日本式で見合いn目、出入り2n目のヨセは、中国式では見合い(n+1)目、出入り(2n+2)目になる。よく考えてみればあたりまえ。地の得にひとつ石をおいた得が加わるから。
(この計算は、あくまでダメを計算に入れればこうなるということです。中国の人が実際このように計算しているかというと、そうでははないと思います。おそらく日本式で計算してる。)

7. 自分の地に打つのは損しない?

中国ルールでは石と地を数えるので、自分の地に打つのは損にはならない。
囲碁初心者が出会いがちな悩みとして、生き死にが相手と食い違ったらどうすればいいのか、ということがある。こっちは相手の石が死んでると思ってるのに、相手は生きてると主張する。死んでるなら取って見せろといわれて、実際取って見せることはできるけど、そうするとかかった手の分損になってしまう。で、取ってみせたあと元に戻そうとすると、なんで戻すのかと文句言われたり、棋力不足でもとに戻せなかったりする。ネット碁だと、こういうやりとりをするのは余計にたいへん。
中国ルールなら、実際取ってみせる手が損にならないから問題にならない。つまり、初心者に優しいルールなのだ。普及のことを考えたら中国ルールの方がいいと思う。
損にならないと言っても、それはダメも詰め終わった最終段階でのこと。他に打つ場所がある時に自分の地に手を入れているのはもちろん損になる。ダメも1目の価値があるのだから。日本ルールと同じく一手と1目の損になる。*1
手入れが損にならないというと、下図の★に打つようなヨセがヨセにならないのではないか、と思う人もいるかもしれない。しかし、もちろんそんなことはない。ここに黒が打つことによって、ダメのところに白が入れなくなっている。そのことを考えればちゃんと出入り3目(=日本式で出入り1目)になっていることがわかるだろう。
┌┬○┬┬○┬●┬┬┬
├┼○┼┼○●●┼┼┼
○○○○○★●┼┼┼┼
●●●●●●●┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼
*1前節に書いたように、日本式でn目の手は中国式でn+1目。この"+1"が"一手と1目"の"1目"にあたる。中国式で0目の手は日本式なら-1目。

8. 手入れが損にならないのは中国ルールの欠陥?

中国ルールでは、他に打つ所が(ダメも)なければ、自分の地に手をいれても損にならない。ダメが残っていても偶数個なら見合いなのでやはり損にならない。だからダメがつまって手入れが必要かどうか迷ったときに、手を読む必要なく手を入れてしまえばいいということがある。これを中国ルールの欠点と思っている人がいるらしい。
しかし、この事情は日本ルールでもたいしてかわらない。
前に書いたように、日本ルールでコミ6目半ならば、半目勝負では最後のダメを詰めた方が負けである。すなわち、半目以上負けか1目半以上勝ちである。半目勝ちはない。だから残りのダメの個数が奇数で、手入れが必要か迷ったときは手を入れてしまえばよい。もし手入れが本来不必要だったとしても、もともと半目以上負けか1目半以上勝ちなので、ここで1目損しても勝敗はかわらない。
もしコミが5目半か7目半なら中国ルールとまったく同じで、ダメが偶数なら考えずに手をいれても構わない、ということになる。

9.「子」と「目」

いままで何気なく「1目」などと「目」という単位を使ってきたが、正式な中国ルールでは結果を表すのに「目」という単位は使わない。「子」という単位が使われる。これは呼び方が違うだけでなく、大きさも違う。0.5子=1目。「コミ7目半」というのも正式には「3+3/4子」。半分になっているだけなので、もちろん本質的な違いはない。
なぜこのような単位を使うかというと、実際の数え方に由来する。整地のとき、日本式では黒地と白地を両方数えて比較するが、中国式ではどちらか一方を数えてそれを180.5(=361/2)と比較する。盤面の半分以上を占めていれば勝っているという考え方。そのため、日本式と比べて半分になっている。
個人的な意見だが、この方式は分かりにくいからやめた方がいいと思う。片方を数えたら、もう片方は361からそれを引けば得られるから、その差をとる。こういうやり方の方が日本式との比較がしやすい。
ちなみに、KGSの中国ルールでは「目」で計算している。コンピュータなら整地せずに地と石が数えられるからね。

10. 整地

実際の整地のやり方はこんなふうになる。
本因坊戦第5局の終局図。
fig1

ダメ詰めと手入れをする。中国ルールではここまでで終局。 最後のダメは黒が詰めて、日本式では盤面6目、白半目勝ち。
fig2

まず黒白の死に石を取り除く。
fig3

どちらを数えるか決める。今回は白を数えることにする。まず地を数える。そのために白地を整地するのだが、石を碁笥からもってきて埋めたり、取り除いたりしてもいい(あとから石数も数えて足すので)。この例ではたとえば右下の4目の地は新たな白石で埋めてしまっている。
fig4
白地30目。これを覚えておいて…

次に石数を数える。十個単位の固まりをつくって数える。
fig5
十個の固まり14個+7で147。
30と147を足して計177。180.5と比較して、盤面白3.5子負け。すなわち盤面7目。日本式と1目違うが、これは最後の手を打ったのが黒だから。
誰がこの作業をするのかというと、TVアジア選手権を見ていたら、記録係がやっていた。記録係のつかない普通の碁やアマの打つ碁ではどちらかがやるのだろうか?白がやるとかいう慣習があったりするのかな?
これを見て分かるが、整地後の形は日本式の方が美しい。中国式だと終局時の盤面の痕跡が残っていない。

11. 目算

目算は中国の人も日本式でしているらしい。すなわち、地と取られた石を数える。
これは想像だが、地というのはもともと中国ルールでの目算のツールだったのではないか?それがあまりにも勝敗に直結したツールだったので日本で(韓国で?)ルールにまでなってしまったのだろう。

12. 生き死にの定義

日本ルールでは、生き石の定義はかなり難しいことになっている。日本囲碁規約の七条がそれだが、一読して理解できる人は少ないんじゃないかと思う。
中国ルールはその点シンプルで、「両対局者が生き石と合意した石が生き、死に石と合意した石が死に」である。
第八条
1.終局時,經雙方確認,不能被提取的棋都是活棋。
2.終局時,經雙方確認,能被提取的棋都是死棋。
Section 8
At the end of the game, stones which both players agree could inevitably be captured are dead. Stones that cannot be captured are alive.
合意できなかった場合は、「合意できるまで打ち続けなければならない」。("Any disagreements must be settled by further actual play." Section 21-3.)
つまり「実戦解決」である。実際打ち上げてしまえば合意もくそもない。自分の地を埋めるのが損にならない中国ルールならではのわかりやすい解決。
Section 21-2 には 「決着していない部分が残っていたら、その部分の両者の石は生き石とみなす」("if any unsettled positions remain on the board, both sides' stones in these positions are treated as alive." )とあって、上の「合意できるまで打て」というのと矛盾しているように思える。
私が勝手に想像するに、これは「合意してないけど、もう打ちたくない」というケースに備えているんじゃないかと思う。どんなケースでそんなことが有り得るかというと、例えばいわゆる「取ラズ三目」の形。
┌○●●┬
●●○●┼
●●○●┼
○○○●┼
├┼○●┼
白は黒四子が死んでいると主張して、このまま取り上げてしまいたいのだが、黒が同意しなかった場合一の一に打って取り上げなければならない。けど、そうすると損になるから打ちたくない。こんなケースでこのまま放置して終了したら、黒四子は(白一子も)生きとみなすよ、ということではないかと思う。
あくまで想像ですが。

13. 隅の曲がり四目

実戦解決で問題になるのが「隅の曲がり四目」である。
普通は相手からの劫立てを全部消してから劫を仕掛ければ勝てるので、死と合意できるだろう。(劫立てを消す手も損にならない。) しかし、セキ等の消せない劫立てがある場合はどうなるのか?
●┬○●┬┬●○┐
●○○●┼┼●○┤
●○●●┼┼●○┤
├○●┼●●●○┤
○○●┼●○○○○
●●●●●○●●●
○○○○○○●●┤
├┼┼┼○●●○●
└┴┴┴○●┴○┘
この図で、左上の白は日本ルールではもちろん死である。中国ルールでは、白がそれに同意しなければ黒は実際に取りに行かねばならない。しかし、右下に白から一劫あり黒は劫に勝てない。ということはこの白は生きということになる。
…と思っていたんだけど、これ本当なのかな?なんか不安になってきた。隅の曲がり四目が死でないこともあり得るということになると、碁の内容に大きな影響があるんじゃないのか。
┌┬┬┬┬┬┬┬
├┼┼┼○○★┼
├○○○●●●┼
├○●●┼┼┼┼
├●┼┼┼┼┼┼
├┼●┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼
例えば、★に抑える手の価値が変わってしまうんではないかと思うのだが…(この後黒から下がりが利き。白手を抜くと曲がり四目で死になる。)
本当に白生きなのかなあ?もしそうなら、中国の公式戦でそういう例があると思うのだが、どなたかご存じないですか?
また、KGS等のネット碁でこういう形が出来たらどうするか?相手が中国ルールをよく知らなければ、自分が白で白生きを主張したら喧嘩になってしまいそう。中国ルールで卓を立てていても、申し込んでくる人はそれに気付いていないことがほとんどだし。自分がもしそういうケースに出会ったら、面倒なので白死ということにしてしまおうと思っている。

14. 超劫ルール

中国ルールでは、過去に出現した盤面と同じ盤面になるような手は禁止されている。("Reappearance of the same board position is forbidden throughout the game." Section 6.) 劫の取り返しの禁止を一般化したものなので、これを超劫ルール(super-ko rule)という。
これを採用するのは主に二つの目的がある。ひとつは、「両劫に仮生き」を死にするため。
┌○●○●┬●○┬
○○●○○●●○┼
├○●○┼●●○┼
○●●○○●●○┼
●┼●○┼○●○┼
├┼●○○●●○┼
├┼●●●○○○┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼
実戦解決だと、両劫セキなどの無限の劫立てがある場合、左上の白を取ることができず生きになってしまう。超劫ルールがあると両劫を劫立てとして使えなくなるので死になる。実際にやってみると、
┌○●○●●○┬  ┌○●○○●○┬
○○●○○●●○┼  ○○●○○●●○┼
○●○┼●●○┼  ●○●○┼●●○┼
○●●○○●●○┼  ●●○○●●○┼
●┼●○○●○┼  ●┼●○●●○┼
├┼●○○●●○┼  ├┼●○○●●○┼
├┼●●●○○○┼  ├┼●●●○○○┼
├┼┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼┼
白6が超劫ルールにひっかかってしまう。
ちなみに「両劫に仮生き」を英語で "Moonshine life" というようだ。両劫という太陽に照らされないと光り輝けないということか。
もう一つは、下図のようなセキで無限ループを主張して終局を拒否するということをできなくするため。
┌○┬●○┬ 
●○●●○┼ 
├●●○○┼ 
●●○○┼┼ 
○○○┼┼┼ 
├┼┼┼┼┼ 
黒から1の1に放り込むと、
○┬●○┬  ●○┬●○┬  ┌○┬●○┬
●○●●○┼  ●○●●○┼  ○●●○┼
├●●○○┼  ●●○○┼  ○●●○○┼
●●○○┼┼  ●●○○┼┼  ●●○○┼┼
○○○┼┼┼  ○○○┼┼┼  ○○○┼┼┼
├┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼
となって、もとに戻る。日本ルールだと1ループ毎にアゲハマがひとつ増えるので何回かループして十分得したあと白二子を捨てればいい。しかし中国ルールではアゲハマは無関係なので、この解決法を採ることができない。超劫ルールがあればもちろん無限ループは禁止される。
超劫ルールがあれば三劫・長生なども無勝負にはならないはずなのだが、次のような条文があって無勝負もあり得るようだ。
第二十條 全局同形再現
3.原則上禁止三劫循環、四劫循環,長生、雙提兩子等全局同形再現的罕見特例。根據不同比賽,也可制定相應的補充規定,如:無勝負、和棋、加賽等。
(いいかげんな訳。三劫・四劫・長生・循環劫などの形でも同形再現は原則禁止。ただし、棋戦ごとに無勝負・引き分け・再試合・などの補充規定を制定してもよい。)

15. 地の定義

日本ルールでの地の定義は、「セキ石以外の活き石で囲んだ空点」、となっている(日本囲碁規約第八条)。それに対し中国ルールでは単に「活き石で囲まれた空点」("the vacant points enclosed by those(living) stones." Section 9.) となっている。つまり、セキ石の眼を数えるかどうかが異なる。
○┬●┬●○┬┬  ┌●●┬○●┬┬  ┌●┬●○┬┬┬
├○●●●○┼┼  ●○○○○●┼┼  ○○●●○┼┼┼
●●○○○○┼┼  ├○●●●●┼┼  ├●●○○┼┼┼
├●○┼┼┼┼┼  ○○●┼┼┼┼┼  ●●○○┼┼┼┼
●●○┼┼┼┼┼  ●●●┼┼┼┼┼  ○○○┼┼┼┼┼
○○○┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼
├┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼  ├┼┼┼┼┼┼┼
日本ルールでは、これらの図の黒地は0目だが、中国ルールではそれぞれ2目、1目、1目となる。
って、これも本当か?不安だ。KGSの中国ルールは確かにこうなっているけど。でも、セキの計算は日本にあわせるために複雑なことをしている、と昔どこかで読んだ記憶がある。ちょっと公式戦の棋譜を探してみよう。

16. ダメ

ダメは一箇所につき、双方の地0.5目と数える。(「双方活棋之間的空点各得一半。」第九条。"Vacant points situated between both sides’ living stones are shared equally." Section 9.)これは、どちらの地とも数えないのと同じなのだが、例の180.5目と比較するという方法と整合性をもたせるために、こうなっていると思われる。
中国ルールには奇数差しかないと書いたが、ダメが奇数なら偶数差もあり得る。
┌○○┬○●┐
●●○○○●┤
├●○●●●┤
●●●○●┼┤
○○○○●●┤
├┼┼○○●●
└┴○┴○○●
例えばこの図は黒24.5目。七路盤だから全部で49目でその半分は24.5。したがって盤面ジゴである。(もちろん白も24.5目になっている。)
KGSの中国ルールでは、ダメは数えない。上の例では黒24対白24になる。

17. パス

中国ルールでは一回パスする毎に一目損をする。日本ルールでは損得なしなので、パスが生じると日本ルールと結果が異なってくる。
パスが生じる可能性があるのは、一方が着手できないような点ができたとき。それはセキと劫で起こり得る。
まずはセキのケース。
┬●○┬●┬○●┬
┼●○┼●●○●┼
┼●○○○┼○●┼
┼●●●○○○●┼
┼┼┼●●●●●┼
たとえば、図のようなセキでは白からはダメをつめることはできない。他の箇所のダメつめが終わったあと、黒だけここをつめることができるので白にパスを強いることができる。
┌●○┬●┬○●┐
├●○┼●●○●┤
├●○○○┼○●┤
├●●●○○○●┤
├┼┼●●●●●●
├┼●●┼○○○○
●●●○○○┼┼┤
○○○┼┼○┼○┤
└┴┴┴┴○┴┴┘
この図は日本ルールでは盤面白2目勝ちである。しかし中国ルールでは、この後、
┌●○┬●○●┐  ┌●○┬●●○●┐
├●○●●○●┤  ├●○●●●○●┤
├●○○○┼○●┤  ├●○○○┼○●┤
├●●●○○○●┤  ├●●●○○○●┤
├┼┼●●●●●●  ├┼┼●●●●●●
├┼●●○○○○  ├┼●●●○○○○
●●●○○○┼┼┤  ●●●○○○┼┼┤
○○○┼┼○┼○┤  ○○○┼┼○┼○┤
└┴┴┴┴○┴┴┘  └┴┴┴┴○┴┴┘
白パス
となって、黒41対白40で盤面黒1目勝ちとなる。


次に劫のケース。最後のヨセが劫で、劫取りのあと劫立てもダメも残っていなければパスするしかない。
┌●○★○┬┐
●┼●○┼○┤
├●○○┼┼┤
├●●●○┼┤
├┼┼●○┼┤
├┼┼●○┼┤
└┴┴●○┴┘
今黒が★と劫を取ったところ。アゲハマは黒が今取った一目だけとする。白は劫立てもないしダメもないのでパスをする。黒が劫を継いで終局。
┌●●●○┬┐
●┼●○┼○┤
├●○○┼┼┤
├●●●○┼┤
├┼┼●○┼┤
├┼┼●○┼┤
└┴┴●○┴┘
日本ルールなら黒14対白15で盤面白1目勝ち。しかし中国ルールなら黒25対白24で黒1目勝ち。黒が2手多く打っているので2目の差が生じる。

18. パスをめぐって1

これを利用して、日本ルールではまったく得にならない劫をしかけて得をすることができる場合がある。
┌●●┬┬┬┐
├○●●●●┤
○○○○┼●┤
├┼┼○┼●┤
├┼┼○●●┤
○○○┼○●┤
└┴┴┴○●┘
この図は日本ルールでは黒1目負け。中国ルールでも普通にダメを詰めたら、24目対25目で黒一目負け。
┌●●┬┬┬┐
★○●●●●┤
○○○○┼●┤
├┼┼○┼●┤
├┼┼○●●┤
○○○┼○●┤
└┴┴┴○●┘
そこで★と劫を仕掛ける。
●●┬┬┬┐  ○●●┬┬┬┐  ●●┬┬┬┐
●○●●●●┤  ○●●●●┤  ●○●●●●┤
○○○○┼●┤  ○○○○┼●┤  ○○○○●┤
├┼┼○┼●┤  ├┼┼○┼●┤  ├┼┼○●┤
├┼┼○●●┤  ├┼┼○●●┤  ├┼┼○●●┤
○○○┼○●┤  ○○○○●┤  ○○○┼○●┤
└┴┴┴○●┘  └┴┴○●┘  └┴┴○○●┘
○●●┬┬┬┐  ○●●┬┬┬┐
├○●●●●┤  ★○●●●●┤
○○○○○●┤  ○○○○○●┤
├┼┼○●●┤  ├┼┼○●●┤
├┼┼○●●┤  ├┼┼○●●┤
○○○┼○●┤  ○○○┼○●┤
└○○●┘  └○┴○○●┘
ここで白パスするしかなく、黒劫継ぎで
●●●┬┬┬┐
●○●●●●┤
○○○○○●┤
├┼┼○●●┤
├┼┼○●●┤
○○○┼○●┤
└○┴○○●┘
となり、黒25対白24で黒1目勝ち。白にパスを強いることにより四つのダメのうち三つを打つことができたことになる。
この劫はただ勝つのではだめで、あくまでパスさせることが目的。ただ勝つだけでは2手かけてダメをふたつ詰めたことになるだけなので無意味。だから、相手がダメを詰める手は全て劫立てになるし、もともとダメの数が偶数個でないとこの手段は使えない。

19. パスをめぐって2

パスをさせるために、あるいはパスをさせられないために、劫よりもダメを詰めることを優先させなければならないことがある。
一番単純なケースがこの図。
┌●┬●○┬┐
├●●○○┼┤
├┼●●○○○
├┼●┼○┼┤
├┼●●○┼┤
├┼●○┼○┤
└┴●○┴┴┘
黒は劫を継ぐと1目負けなのでダメをつめる。
┌●●○┬┐  ┌●○○┬┐  ┌●●○┬┐ パス
├●●○○┼┤  ├●●○○┼┤  ├●●○○┼┤
├┼●●○○○  ├┼●●○○○  ├┼●●○○○
├┼●○┼┤  ├┼●●○┼┤  ├┼●●○┼┤
├┼●●○┼┤  ├┼●●○┼┤  ├┼●●○┼┤
├┼●○┼○┤  ├┼●○○┤  ├┼●○┼○┤
└┴●○┴┴┘  └┴●○┴┘  └┴●○○┴┘
これで黒1目勝ち。


もう少し複雑な場合。
┌●○┬○┬┐
├●●○○┼┤ アゲハマ:白2
├┼●●○┼┤
├┼●┼○┼┤
├┼●○○┼┤
├┼●●○○┤
└┴●○┴○┘
ここで黒劫を取ると、半劫ツギツギ、白最後のダメつめとなって終局。黒1目負け。だから黒はまずダメをつめる必要がある。
┌●○○┬┐  ┌●●○┬┐ パス
├●●○○┼┤  ├●●○○┼┤
├┼●●○┼┤  ├┼●●○┼┤
├┼●○┼┤  ├┼●●○┼┤
├┼●○○┼┤  ├┼●○○┼┤
├┼●●○○┤  ├┼●●○○┤
└┴●○○┘  └┴●○○○┘
黒1目勝ち。


パスさせられるのを防ぐ場合。
┌●●○┬┬┐
├●○○○┼┤
├┼●┼○┼┤
├┼●●○┼┤
├┼●○┼○┤
├┼●●○○┤
└┴●┴●○┘
下図のように劫を取ったり継いだりするとパスさせられて負けてしまう。
┌●●○┬┬┐  ┌●●○┬┬┐  ┌●●○┬┬┐ パス
├●○○○┼┤  ├●○○○┼┤  ├●○○○┼┤
├┼●○┼┤  ├●○○┼┤  ├○●○○┼┤
├┼●●○┼┤  ├●●○┼┤  ├●●●○┼┤
├┼●○○┤  ├┼●●○┤  ├┼●○○┤
├┼●●○○┤  ├┼●●○○┤  ├┼●●○○┤
└┴●●○┘  └┴●●●○┘  └┴●●●○┘
┌●●○┬┬┐  ┌●●○┬┬┐  ┌●●○┬┬┐ パス
├●○○○┼┤  ├●○○○┼┤  ├●○○○┼┤
├┼●○┼┤  ├┼●○○┼┤  ├┼●○○┼┤
├┼●●○┼┤  ├┼●●○┼┤  ├┼●●○┼┤
├┼●○○┤  ├┼●●○┤  ├┼●○○┤
├┼●●○○┤  ├┼●●○○┤  ├┼●●○○┤
└┴●●○┘  └┴●●●○┘  └┴●●●○┘
だからまずダメをつめる。
┌●●○┬┬┐  ┌●●○┬┬┐
├●○○○┼┤  ├●○○○┼┤
├┼●○┼┤  ├┼●●○┼┤
├┼●●○┼┤  ├┼●●○┼┤
├┼●○○┤  ├┼●○○○┤
├┼●●○○┤  ├┼●●○○┤
└┴●●○┘  └┴●●●○┘
黒1目勝ち。
劫が二個あって劫材が少ないときは、どうせ両方は勝てないので「継がれたらもう一方を継ぐ、取られたらもう一方を取る」という局面をキープすることが必要。


さらに複雑な例。
┌┬┬┬┬○┬○●
├┼┼┼┼○○●●
○○○○○○●┼●
├┼┼┼┼○●┼┤
○○○○○┼●┼┤
├○○┼○○○●●
○●●○●┼┼●●
●●●●●●●┼┤
└┴┴┴┴●●┴┘
黒はここで劫を取るとパスさせられて負けてしまう。まずダメを詰めれば勝ち。(確かめてください。)

20. パスをめぐって3

パスさせるために、後手1目のヨセより半劫を優先させなければならない場合もある。
●┬┬○┬○┐
●●●○┼○┤
├┼●●○┼┤
├┼●●○┼┤
├┼●○○┼┤
├┼●●○○┤
└┴●○┴○┘
普通にヨセると、
●┬○┬○┐  ●┬●○┬○┐
●●●○┼○┤  ●●●○┼○┤
├┼●●○┼┤  ├┼●●○┼┤
├┼●●○┼┤  ├┼●●○┼┤
├┼●○○┼┤  ├┼●○○┼┤
├┼●●○○┤  ├┼●●○○┤
└┴●○○┘  └┴●○○○┘
黒1目負け。
先に劫を取ると、
○┬○┐  ●●○○○┐  ●●○○○○┐ パス
●●●○┼○┤  ●●●○○┤  ●●●○┼○┤
├┼●●○┼┤  ├┼●●○┼┤  ├┼●●○┼┤
├┼●●○┼┤  ├┼●●○┼┤  ├┼●●○┼┤
├┼●○○┼┤  ├┼●○○┼┤  ├┼●○○┼┤
├┼●●○○┤  ├┼●●○○┤  ├┼●●○○┤
└┴●○○┘  └┴●●○┘  └┴●○○┘

●●○○○○┐  ●●○○○○┐
●●●○┼○┤  ●●●○┼○┤
├┼●●○┼┤  ├┼●●○┼┤
├┼●●○┼┤  ├┼●●○┼┤
├┼●○○┼┤  ├┼●○○┼┤
├┼●●○○┤  ├┼●●○○┤
└┴●●○┘  └┴●●●○┘
黒1目勝ち。
半劫は出入り2/3目というけれど、最終的に勝ててそれが手止まりなら出入り1目と同じ価値。そのうえパスさせることができるならその方が得ということ。

21. パスをめぐって4

数年前、中国乙級リーグで瀬戸大樹(当時確か)三段が、相手にパスをさせて逆転の半目勝ちをしたことがあった。中国ルールをよく知っているはずの中国棋士が間違えて、日本棋士が中国ルールを利用して勝ったということで、当時(中国で?)話題になった。その中国棋士のミスというのは、「劫を取らないでダメを詰めておけばよかった」というものだった。
fig6
これがその局面。黒1と劫を取ったのが敗着になった。これでどこでもダメを打っておけばよかった。この劫と左上の半劫を「片方を取られたらもう片方を取る、継がれたら継ぐ」という状態にしておかなければいけなかった。
fig7
30数手後こうなった。白が左上の半劫をとったところ。ダメは10個と偶数なので、白は劫を頑張りきれば黒にパスさせられる。黒からは劫立てはあとひとつ。ダメを詰めるのも劫立てになるが、その5個を足しても6個。白からは現段階で7個。ダメが詰まればもっと増えるから余裕で勝ち。
この局面になるまでに、白は後手1目より半劫の方を優先させていて、きちんと読み切って打っていることがわかる。(えらい!ちゃんと中国ルールを勉強してたんだね。)
棋聖道場に棋譜が残っていたのでこちらの方に転載しておいた。しかし、肝心の小ヨセの手順が間違っている。268と269の交換は少なくとも233より前に打ってあるそうだ。(引っ越し前の関西棋院的掲示板で本人に聞いたので間違いない。)

22. 置碁

置碁についての規則は条文には見つけられない。省略されている部分に書いてあるのだろうか?
KGSでは置碁は自由置碁になっている。また、置き石の分だけ白にコミが与えられる。最後の計算で最初から置いてある置き石の分まで数えてしまうので、その分を補償するという意味。ヘルプには「置碁においては、置石数プラス1のコミが白番に与えられる。」とあるが、これは誤訳。英語ページでは "The white player is given one point extra komi for every handicap stone" となっている。
ちなみにAGAルールの「置碁の場合に白番が1目余分にコミを貰うところが異なっている。」も誤訳。「置石の数マイナス1のコミ」が正しい。 原文は "one point of extra komi for all but the first handicap stone" 。
先と二子の関係を考えてみるとAGAルールの「置石の数マイナス1」の方が自然か。

23. 気持ち悪い形

中国ルールで唯一気持ち悪いと思うのが次のようなケース。
●●○●┐  ●●○●┐
├●○●●  ├●○●●
●●○●○  ●●○●┤
●○○○┤  ●○○○★
└○┴○○  └○┴○○
黒が劫を取ったところ。白は打つところがないのでパス。黒もパス。ここで右辺の黒の生死は?
日本ルールなら黒死。中国ルールだと実戦解決なので、実際に黒を取ってみせなければならないが、それは不可能。超劫ルールに引っ掛かるので、劫を取り返せない。ということは黒生き。劫のところは黒地1目と数える、んだよね?
打てる所が自分の地の中にも相手の地の中にも一カ所もないというのは、小路盤だからこそ起こるケースで、実際上はまずないだろうからいいんだけど。

24. あとがき

中国ルールの日本ルールとの違いを勉強してみました。どういう点が違うのか、という視点で書いてきたので、なんか面倒そうだという印象を与えてしまったかもしれません。しかし実際打ってみれば、ほとんど意識することなく打てます。
KGSでもう何十局も打っているが、中国ルール特有の事態には遭遇していません。たまに細かい碁で相手がダメ詰めをしないでパスしてしまったときに、こっちだけダメ詰めして稼ぎたくなる誘惑に駆られることがあるくらい。中国ルールは実戦解決なのでトラブルになりにくく安心して打てます。皆さんも是非中国ルールで打ってみてください。

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